はじめに: Log4J2とは?
Log4J2の概要と用途
Log4J2は、Apache Software Foundationが開発したJava向けのログ記録ライブラリです。ログは、アプリケーションの実行中に発生するイベントやエラーを記録するために使用され、特にデバッグや障害のトラブルシューティングに役立ちます。Log4J2は、その柔軟性、パフォーマンスの高さ、設定の簡便さから、Javaアプリケーションで広く利用されています。
主な用途としては、以下のような場面で使用されます:
- エラーログの記録: システムエラーや例外をログに記録し、運用時に発生した問題を追跡するため。
- デバッグログの記録: 開発時にアプリケーションの動作を詳細に記録し、問題箇所を特定するため。
- 運用監視: システムが正常に動作しているかを監視するために、ログを活用して異常を早期に検知します。
Log4J2の脆弱性リスクとその重要性
Log4J2の脆弱性は、特に2021年にLog4Shellという重大な脆弱性が発覚したことによって、大きな注目を集めました。この脆弱性により、悪意のある攻撃者がリモートからコードを実行することが可能となり、インターネットに接続されたサーバーやサービスが大きなリスクにさらされました。
Log4Shellでは、攻撃者がログメッセージに特別な文字列を仕込むことで、アプリケーションがそれを処理する際に外部の悪意あるコードを実行できてしまうという問題がありました。この脆弱性により、多くの企業やシステムが影響を受け、迅速なアップデートと対策が求められました。
このような背景から、Log4J2を利用している場合は、バージョンや設定の確認、アップデートが非常に重要になります。特に、脆弱性が発覚した際には、早急に対策を取る必要があります。
Log4J2 と Log4J の違い
- Log4Jは、その前身となるログライブラリで、Apacheが提供していました。Log4Jの初期バージョンはかなり長い間使用されていましたが、その後、いくつかの問題やパフォーマンスのボトルネックが指摘され、Log4J2が開発されました。
- Log4J2は、Log4Jの後継であり、パフォーマンスや柔軟性が向上しているだけでなく、新しい機能も追加されています。例えば、ログの非同期処理やより強力なフィルタリング、レイアウト機能の改善などが挙げられます。
補足:Maven や Gradle を使用している場合
依存関係管理ツール(MavenやGradle)を利用している場合、pom.xml
やbuild.gradle
を修正するだけでLog4J2を最新バージョンに更新できます。ただし、本記事では手動でのJARファイルの置き換え方法に焦点を当てるため、MavenやGradleによる更新手順は対象外とします。
7-Zip最新版へのアップデート方法の記事もご参照いただけますと幸いです。
Windows 11 24H2へのアップデートの制御に関する記事もご参照いただけますと幸いです。
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Log4J2の使用状況を確認する方法
ご自身のPCやプロジェクトでLog4J2が使用されているかを確認するために、コマンドプロンプトを使用する方法があります。以下の手順を試して、Log4J2がインストールされているか、使用されているかを確認します。
1. コマンドプロンプトを開く
コマンドプロンプトを開きます。Windowsの場合、スタートメニューで「cmd」を検索して開いてください。
コマンドプロンプトの起動方法については、こちらの記事をご参照いただけますと幸いです。
※Log4J2 の使用状況の確認では、管理者で起動する必要はありません。
2. カレントフォルダをプロジェクトのルートフォルダに変更
コマンドプロンプトで、Log4J2のファイルが含まれている可能性があるプロジェクトのルートフォルダに移動します。
ルートフォルダとは、プロジェクトの最上階層のディレクトリのことです。コマンドで以下を実行して、ルートフォルダに移動します。
cd \

3. where
コマンドでLog4J2のJARファイルを検索
次に、where
コマンドを使って、Log4J2のJARファイルを検索します。log4j-core*.jar
というパターンで、Log4J2のコアライブラリ(log4j-core
)を探します。
以下のコマンドを入力します。
where /r . log4j-core*.jar
このコマンドは、現在のディレクトリ(ルートフォルダ)から始めて、その下の全てのサブディレクトリを検索します。もしLog4J2がプロジェクトに含まれていれば、log4j-core
のJARファイルのパスが表示されます。
4. 結果を確認
where
コマンドがLog4J2のJARファイルを見つけた場合、そのパスが表示されます。表示されたファイルパスに、Log4J2が含まれていることが確認できます。
表示されない場合は、Log4J2がこのプロジェクトで使用されていない可能性があります。

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Log4J2のバージョン確認方法
先述の where
コマンドで見つけたJARファイルのフォルダパスをエクスプローラで開き、ファイルの有無を直接確認することで、バージョンを特定できます。
1. エクスプローラーでJARファイルを確認
where
コマンドで見つかったパスをエクスプローラーで開きます。

log4j-core-*.jar
というファイルが存在することを確認します。
ファイル名には通常、バージョン番号が含まれています(例:log4j-core-2.12.3.jar
)。
このファイル名に記載されている「2.12.3」の部分がLog4J2のバージョンとなります。
2. JARファイルのプロパティを確認(ファイル名で判別できない場合)
もしファイル名だけではバージョンが特定できない場合、以下の方法で詳細情報を確認できます。
log4j-core-*.jar
を右クリックし、「プロパティ」を開きます。- 「詳細」タブを選択し、製品バージョンを確認します。
- ここに表示されたバージョンが、インストールされているLog4J2のバージョンです。
この方法で、システムやプロジェクトに含まれているLog4J2のバージョンを確認できます。
Log4J2を新しいバージョンに置き換える
Log4J2の脆弱性対策や機能改善のために、新しいバージョンに置き換えることが推奨されます。以下の手順で、最新版を入手し、置き換えを実施します。
1. 最新のLog4J2を入手
Log4J2の最新版は、Apacheの公式サイトから入手できます。
ダウンロード手順:
- Apache Log4J2公式ページ にアクセスします。
- 「Binary distribution」欄から、
log4j-core-*.jar
の最新バージョンをダウンロードします。 - ダウンロードしたファイルを、適切なプロジェクトフォルダやライブラリ管理フォルダに保存します。
2. 古いLog4J2の削除
新しいバージョンを導入する前に、既存のLog4J2を削除する必要があります。
- 前のセクションで確認した
log4j-core-*.jar
の保存場所を開きます。 - 既存の
log4j-core-*.jar
を削除、またはバックアップフォルダに移動します。
3. 新しいLog4J2の配置
- ダウンロードした最新の
log4j-core-*.jar
を、元のJARファイルがあったフォルダに配置します。(例:log4j-core-2.20.0.jar
)

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Log4J2の脆弱性とその対策
Log4J2の脆弱性リスクの詳細
Log4J2は強力なログ管理機能を提供する一方で、過去に深刻な脆弱性が報告されています。特に以下のリスクが存在します。
1. Log4Shell(CVE-2021-44228)
- 2021年12月に発覚した重大なリモートコード実行(RCE)の脆弱性。
- 影響バージョン: Log4J2 2.0-beta9 ~ 2.14.1。
- 攻撃手法: JNDI(Java Naming and Directory Interface)の lookup 機能を悪用し、リモートから任意のコードを実行可能。
- 影響: 多くのサーバーやアプリケーションが脆弱で、緊急の修正が求められた。
2. その他の関連脆弱性
- CVE-2021-45046(修正不備による追加のRCEリスク)
- 影響: Log4J2 2.15.0
- 修正: 2.16.0 以降で修正
- CVE-2021-45105(無限ループを引き起こすDoS攻撃リスク)
- 影響: Log4J2 2.16.0 以前
- 修正: 2.17.0 以降で修正
- CVE-2021-44832(特定の環境で権限を持たないユーザーが悪意のある設定を行うリスク)
- 影響: Log4J2 2.17.0 以前
- 修正: 2.17.1 以降で修正
3. 影響範囲
- Log4J2を利用するJavaアプリケーション(サーバー、クラウドサービス、企業システムなど)
- 広範囲なソフトウェアやミドルウェアがLog4J2を組み込んでおり、影響を受ける可能性が高い。
- Log4J2を利用するJavaアプリケーション(サーバー、クラウドサービス、企業システムなど)が影響を受ける可能性がある。
- 広範囲なソフトウェアやミドルウェアがLog4J2を組み込んでおり、影響が広範に及ぶ。
- 実際の影響:
- AWS、Google Cloud、Microsoft Azure などのクラウドプラットフォーム
- Minecraftサーバー などのオンラインサービス
4. 重要な対策
- 古いバージョン(2.14以前)を使用している場合、脆弱性の影響を受ける可能性が高いため、必ず最新バージョンへの更新が推奨される。
- 最新版(2.17.1 以上)にアップデートすることが最も安全な対策。
脆弱性対策方法と修正パッチの適用方法
1. Log4J2のバージョンを最新に更新する
Log4J2の脆弱性は、Apacheが提供する修正パッチを適用することで対策できます。
- 最新バージョンの入手方法
- Apache Log4J2公式サイト にアクセス。
- 最新の安定版をダウンロード。
- 既存の
log4j-core-*.jar
を新しいバージョンに置き換える。 - 必要に応じてシステムやアプリケーションを再起動し、変更を反映する。
2. 緊急回避策(アップデートが困難な場合)
Log4J2 の脆弱性(CVE-2021-44228)に対して、すぐにアップデートできない場合は、一時的な回避策として以下の方法が使用できます。
ただし、完全な対策ではなく、最終的には最新版に更新する必要があります。
① 環境変数の設定
- Log4J 2.10 以降を使用している場合、以下の環境変数を設定することで
lookup
機能を無効化できます。
iniLOG4J_FORMAT_MSG_NO_LOOKUPS=true
- ただし、Log4J 2.14.1以前では完全な対策にはならないため、可能な限りアップデートを推奨します。
② JndiLookup.class
の削除
- Log4J2 の JNDI Lookup 機能を無効化するために、以下のコマンドで
JndiLookup.class
を削除することができます。
swift
zip -q -d log4j-core-*.jar org/apache/logging/log4j/core/lookup/JndiLookup.class
- これにより JNDI Lookup を無効化できますが、根本的な解決にはならないため、最終的にはアップデートが必要です。
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まとめ: Log4J2の管理とセキュリティ対策
日々のメンテナンスとセキュリティ維持の重要性
Log4J2は便利なログ管理ライブラリですが、脆弱性を放置すると深刻なセキュリティリスクを招く可能性があります。そのため、以下のポイントを意識した管理が必要です。
1. 定期的なバージョンチェック
- Log4J2は新しい脆弱性が発見される可能性があるため、定期的に公式サイトで最新情報を確認。
- 使用しているバージョンが古い場合は適宜アップデートを実施。
2. 不要な機能の無効化
- 使用しないログ機能(JNDI Lookupなど)は、設定や環境変数で無効化。
- 設定ファイル(
log4j2.xml
)の見直しを行い、不要な機能を減らす。
3. システム全体のセキュリティ監視
- Log4J2の脆弱性だけでなく、他のライブラリやシステム全体のアップデートを管理。
- 定期的な脆弱性スキャンツールを活用し、セキュリティリスクを事前に特定する。
Log4J2の脆弱性とその対策
Log4J2は強力なログ機能を提供する一方で、脆弱性によるセキュリティリスクが発生することがあります。本記事で紹介したように、定期的なバージョン確認と適切なアップデートを行うことで、脆弱性を最小限に抑えることができます。
特に、Log4Shellのような深刻な脆弱性は攻撃者に悪用される可能性があるため、放置せずに最新バージョンへ更新することが重要です。
今後も、Log4J2を含むライブラリの管理を徹底し、安全なシステム運用を心がけましょう。
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